厚生労働省が1月24日に労働政策審議会に諮問していた「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案要綱」について、1月27日同審議会から厚生労働大臣に対し妥当である旨答申がなされた。
同改正案には、職場における「顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者」の言動に起因する問題に関し、事業主が措置を講じること、その措置に関し国が指針が定めること等が盛り込まれている。
答申を踏まえ、厚生労働省は法案を作成し今期通常国会に提出する予定。
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案要綱(抜粋)
第一 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律の一部改正
一 職場における労働者の就業環境を害する言動に関する規範意識を醸成するための国による啓発活動
国は、職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決を促進するために必要な施策の充実に取り組むに際しては、何人も職場における労働者の就業環境を害する言動を行ってはならないことに鑑み、規範意識の醸成がなされるよう、必要な啓発活動を積極的に行わなければならないものとすること。
二 治療と就業の両立支援対策
1 事業主は、疾病、負傷その他の理由により治療を受ける労働者について、就業によって疾病、負傷の症状が増悪すること等を防止し、治療と就業を両立することを支援するため、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとすること。
2 厚生労働大臣は、1の措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を定め、これを公表するものとすること。
3 2の指針は、労働安全衛生法第七十条の二第一項に規定する指針と調和が保たれたものでなければならないものとすること。
4 厚生労働大臣は、2の指針に従い、事業主又はその団体に対し、必要な指導等を行うことができるものとすること。
三 職場における顧客等の言動に起因する問題に関して事業主が講ずべき措置等
1 事業主は、職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(以下四の5において「顧客等」という。)の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないものとすること。
2 事業主は、労働者が1の相談を行ったこと又は当該事業主による1の相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとすること。
3 事業主は、他の事業主から当該事業主の講ずる1の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならないものとすること。
4 厚生労働大臣は、1から3までの事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとすること。
四 職場における顧客等の言動に起因する問題に関する国、事業主、労働者及び顧客等の責務
1 国は、労働者の就業環境を害する三の1の言動を行ってはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この四において「顧客等言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、各事業分野の特性を踏まえつつ、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならないものとすること。
2 事業主は、顧客等言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる1の措置に協力するように努めなければならないものとすること。
3 事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、顧客等言動問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならないものとすること。
4 労働者は、顧客等言動問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる三の1の措置に協力するように努めなければならないものとすること。
5 顧客等は、顧客等言動問題に対する関心を深めること等に努めなければならないものとすること。
五 その他
その他所要の規定の整備を行うこと。