カスハラとは?法律上の位置づけ

パワハラやセクハラは法令で定義されていますが、カスハラは現時点では法令で明確に定義されていません。

しかし、法令ではないものの、行政が公表しているものでカスハラに言及している部分もります。本記事では、行政におけるカスハラの解釈について解説していきます。

カスハラ対策

カスハラとは?厚労省カスハラ指針について

カスハラとは?厚労省カスハラ指針について

2020年6月に「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省令和2年1月15日告示第5号。以下「厚労省パワハラ指針」といいます。)が施行されました。

厚労省パワハラ指針の中の「7 事業主が他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組の内容」は、カスハラに関する内容となっています。

具体的には以下のとおりです。

事業主が他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組の内容

事業主は、取引先等の他の事業主が雇用する労働者又は他の事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為(暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等)により、その雇用する労働者が就業環境を害されることのないよう、雇用管理上の配慮として、以下のような取組を行うことが望ましい。

⑴ 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

⑵ 被害者への配慮のための取組(被害者のメンタルヘルス不調への相談対応、著しい迷惑行為を行った者に対する対応が必要な場合に1人で対応させない等の取組)

⑶ 他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為による被害を防止するための取組(マニュアルの作成や研修の実施等、業種・業態等の状況に応じた取組)

※厚労省カスハラ指針をもとに、引用部分などを執筆者が一部改変

カスハラとは?厚労省カスハラマニュアルについて

カスハラとは?厚労省カスハラマニュアルについて

その後の2022年2月に公表された厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」においては、カスハラについて、以下のとおり定義されています。

顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの(2024年7月時点)

 さらに留意事項として、以下の通り記載されています。

・「顧客等」には、実際に商品・サービスを利用した者だけでなく、今後利用する可能性がある潜在的な顧客も含みます。

・「当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして・・・社会通念上不相当なもの」とは、顧客等の要求の内容が妥当かどうか、当該クレーム・言動の手段・態様が「社会通念上不相当」であるかどうかを総合的に勘案して判断すべきという趣旨です。

・顧客等の要求の内容が著しく妥当性を欠く場合には、その実現のための手段・態様がどのようなものであっても、社会通念上不相当とされる可能性が高くなると考えられます。他方、顧客等の要求の内容に妥当性がある場合であっても、その実現のための手段・態様の悪質性が高い場合は、社会通念上不相当とされることがあると考えられます。

・「労働者の就業環境が害される」とは、労働者が、人格や尊厳を侵害する言動により身体的・精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じる等の当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。

また、「顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合」と「要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なもの」の例として、それぞれ以下のとおり挙げられます。

「顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合」の例

・企業の提供する商品・サービスに瑕疵・過失が認められない場合
・要求の内容が、企業の提供する商品・サービスの内容とは関係がない場合

「要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動」の例

(要求内容の妥当性にかかわらず不相当とされる可能性が高いもの)
・身体的な攻撃(暴行、傷害)
・精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)
・威圧的な言動
・土下座の要求
・継続的な(繰り返される)、執拗な(しつこい)言動
・拘束的な行動(不退去、居座り、監禁)
・差別的な言動
・性的な言動
・従業員個人への攻撃、要求
(要求内容の妥当性に照らして不相当とされる場合があるもの)
・商品交換の要求
・金銭補償の要求
・謝罪の要求(土下座を除く)

カスハラとは?東京都カスハラ防止条例(案)について

カスハラとは?東京都カスハラ防止条例(案)について

本稿執筆時点において、東京都およびその他の都道府県においてカスハラ防止条例はまだ公表されていません。

しかし、2024年7月19日に東京都産業労働局から公表された「東京都カスタマーハラスメント防止条例(仮称)の基本的な考え方」には、以下のように記載されています。

まとめ

カスハラとは?法律上の位置づけのまとめ

以上のとおり、カスハラは現段階では法令で明確に定義されておらず、行政が公表する指針やマニュアル、条例案においても一義的には定められていません。

しかし、最終的には顧客等の当該行為がカスハラに該当するかを判断できれば十分です。

その判断基準の考え方は、大まかに「要求『内容』の不当性と要求『手段・態様』の不当性を総合的に判断し、その要求が『社会通念上不相当』といえるか否か」で判断すればよいのです。

その詳細については、以下の記事で詳しく解説しています。

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