従業員が何らかのミスをしたような場合や、従業員が気に食わないような場合に、当該従業員の処分を求める顧客がいます。
従業員の解雇などの処分を求める行為には、企業はどのような対応を取るべきなのでしょうか。
この記事では、従業員の解雇などの処分を求めるクレーマー・カスハラへの対応方法についてお伝えします。
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従業員の懲戒処分を顧客は下すことができるのか
そもそも顧客は、従業員の解雇や減給などの懲戒処分を下すことはできるのでしょうか。
懲戒の権限は誰にあるか
従業員に対する懲戒処分は、企業秩序維持の観点から、労働契約関係に基づく使用者(企業)の権能として行われるものです。
そのため、懲戒の権限は企業にあります。
したがって、顧客は、従業員の解雇といった措置を取ることはできません。
検討なしに従業員を懲戒処分をすることは許されない
上述の通り、懲戒の権限は企業にあります。
仮に従業員にミスがあったとしても、直ちに懲戒処分に結びつくわけではありません。
そのため、企業が何らの検討することもなく、単に顧客からの求めに応じて、懲戒処分を行うことは許されません。
そのような懲戒処分は、懲戒権の濫用(労働契約法15条)と判断される可能性が高いでしょう。
従業員の行為に関するクレームの活用
従業員の行為に関する顧客からのクレームは、従業員が具体的にどのような行為に及んだかを認定する重要な資料となります。
そのため、顧客に対する従業員の行為を理由として懲戒処分を行う場合には、顧客への詳細な聴き取りが必要です。
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懲戒処分に関するクレームの対応方針と4つのパターン
顧客からのクレームを類型ごとに分けて検討することが、対応方針の検討の際に有益です。
以下では、類型ごとの対応方針についてご説明します。
なお、クレームの初期段階でどの類型に該当するかの判断に迷う場合には、まずは顧客の主張内容の整理に務めることが適切です。
①顧客の主張内容が”正当”で、懲戒事由に該当する”可能性がある”場合
ここでいう顧客の主張内容が正当とは、顧客の主張内容を前提とした場合において、従業員の顧客に対する道義上の責任が認められる場合をいいます。
例えば、「従業員から暴行を受けた」というクレームがこの類型に該当します。
従業員が顧客に暴力を振るうことは、企業一般において懲戒処分に該当すると考えられます。
そのため、顧客に対して誠意ある対応を心がけ、慎重な事実調査と懲戒処分の検討が必要です。
もっとも、あくまでも懲戒は企業が従業員に対して行うものであり、顧客の意見のみに拘束されるものではないことには注意が必要です。
②顧客の主張内容が”正当”で、懲戒事由に該当する”可能性がない”場合
例えば、「ウェイターが顧客に水をこぼした」というクレームがこの類型に該当します。
クレームの内容が懲戒事由に該当しないことは明らかであるため、情報収集の必要性は、従業員による暴力のようなケースよりも大きくありません。
そのため、クレーム対応の原則である、正当クレーム・不当クレームの判別をした上で対応を行うべきでしょう。
正当クレーム・不当クレームの区別についての詳しい解説は、以下の記事をご参考ください。
③顧客の主張内容が”不当”で、懲戒事由に該当する”可能性がある”場合
例えば、「従業員が外回り中にサボっていた」というクレームがこの類型に該当します。
懲戒事由に該当する可能性はあるものの、この行為によって当該顧客への道義的責任は発生しないと考えられます。
したがって、不当クレームと判断して差し支えなく、毅然とした対応ととれば良いと考えられます。
また、不当クレーマーからの聴取は信用性が低く、相手を増長させる可能性もあるため、担当者による聴取内容の記録の作成を行えば十分です。
それ以上の調査は、事実認定の上でやむを得ない場合に行えば良いでしょう。
④顧客の主張内容が”不当”で、懲戒事由に該当する”可能性がない”場合
「メールを1時間以内に返さない」というクレームがこの類型に該当します。
この類型の場合には、従業員に対する個人攻撃の手段としてクレームをしている可能性があります。
そのため、企業としては毅然とした態度を貫き、かつ、当該従業員のケアを怠らないようにしましょう。
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従業員の懲戒処分を顧客が求めてきた場合の対応をマニュアル化する
顧客から懲戒処分を求められた場合の対応についても、事前にマニュアル化しておくことを推奨いたします。
上述の通り、従業員の懲戒処分を顧客が求めてきた場合には様々な類型があり、類型ごとに適切な対応は異なります。
事前に類型ごとの対応をマニュアル化しておくことにより、顧客に対して効率的な対応をすることができるでしょう。
また、従業員の個人攻撃を目的とするクレームに対して、企業が毅然として対応することは、企業が従業員に対して負っている安全配慮義務を果たすことにも繋がります。
本記事で紹介した類型を基に、顧客から懲戒処分を求められた場合の対応をマニュアル化しておきましょう。
まとめ
本記事のまとめは以下の通りです。
- 従業員の懲戒処分を顧客が下すことはできない
- 懲戒処分を求める理由を詳細にヒアリングすること
- クレームを類型ごとに分けて検討し適切な対応をすること
- マニュアル化をすることで効率的に対応が可能
顧客から従業員への処罰を求めるクレームは、本記事で紹介したような類型があります。
事前にマニュアル化し、類型ごとに適切な対応を検討しましょう。
香川総合法律事務所では、当該企業の実態に添った具体的なマニュアル作成及び実演を交えたコーチング研修等を行っております。クレーマー顧客対応や訴訟になった場合のシームレスな訴訟対応も可能ですので、クレーム対応に不安がおありの場合は是非ご相談ください。
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