念書等を要求するクレーマー・カスハラへの対応方法

念書等を要求するクレーマー・カスハラへの対応方法

クレーマーやカスハラを行う顧客の対応をしていると、稀に念書の提出を要求してくることがあります。

「事実関係について調査中であるにも関わらず、”誠実に対応します”という念書を提出してしまった。調査の結果、自社に責任はないと判明したが、念書を盾にして損害賠償請求を主張しており、話し合いが膠着してしまっている。」

「自社に明らかな落ち度があったので、やむを得ず念書を渡したところ、その念書をインターネットに断片的に切り取られて公開され、SNSで拡散されて炎上してしまった。」

念書等を要求するクレーマー・カスハラへの対応を誤ると、このような事態に発展しかねません。

この記事では、念書を要求するクレーマー・カスハラへの対応方法についてお伝えします。

「誠意を見せろ」と曖昧な要求をするクレーマー・カスハラへの対応
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カスハラ・クレーマーが念書等の書面による謝罪を要求する理由

カスハラ・クレーマーが念書等の書面による謝罪を要求する理由

そもそも、このような念書等の書面による謝罪を求めてくるのはどうしてでしょうか。

本当に謝罪を求めているのであれば、書面ではなく対面で行うほうが、納得感は強いでしょう。

それにも関わらず、書面による謝罪を要求する理由としては、

  • 企業側が非を認めたことを根拠として残すため
  • その書面を自分だけではなく誰かに見せるため

であることが考えられます。

カスハラ・クレーマーからの念書要求に応じるリスク

カスハラ・クレーマーからの念書要求に応じるリスク

念書等書面の提出は原則として断るべきであり、やむなく提出をする場合でも注意が必要です。その理由は、以下のリスクが存在するためです。

裁判等で証拠となるリスク

念書等が当事者間の交渉、民事裁判等の法的手続きにおいて証拠とされるリスクがあります。

謝罪には法的謝罪と道義的謝罪があります。

(謝罪については「クレーマーからの謝罪要求には適切な対応を!謝罪の区別と4つのステップ対応」で解説しております)

法的謝罪を内容とする念書を差し出してしまった場合、事実関係からすれば本来法的責任を負うべきケースではない場合でも、差し出した念書を理由に法的責任を主張されることになります。

また、裁判になった場合、その念書を証拠として提出され、民事裁判で不利となるリスクがあります。

ケースによっては、道義的謝罪しかしていない場合でも、念書や謝罪文という形で提出したこと自体が不利になることもあるので注意が必要です。

インターネット・SNS等で公開されるリスク

提出した念書や謝罪文をインターネットで公開されるリスクがあります。

手に入れた念書や謝罪文が公になると企業イメージがダウンすることがあるため、企業を脅すために利用することがあります。

かつては、公にするためにはマスコミに念書や謝罪文を提供し、マスコミに発表してもらうことしか手がなく、重大事案でなければマスコミに相手してもらえませんでした。

しかし、スマートフォンが普及した現在、インターネットを利用して、念書・謝罪文を公開することが可能です。

特に、SNSを利用すれば、個人でも広く拡散することが容易なため、念書や謝罪文も広く拡散することがあります。

また、SNSにおいては、断片的な情報のみを主張することができるので、企業側に一方的に問題があるように発信し、いわゆる炎上を引き起こす場合があります。

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カスハラ・クレーマーから念書等の提出を求められた場合の対応方法

カスハラ・クレーマーから念書等の提出を求められた場合の対応方法

相手の目的が感情面にある場合には、口頭の謝罪で足りると考えられます。そして、書面での謝罪は、上述のリスクがあります。

そのため、書面での謝罪は原則として断るべきです。

仮に書面を提出する場合であっても、法的責任と道義的責任の区別を意識して記載しましょう。

クレーマーからの謝罪要求には適切な対応を!謝罪の区別と4つのステップ対応

そして、法的謝罪をする場合には、謝罪の対象を明確にした書面を提出するようにしましょう。

なお、「カスハラ対策実務マニュアル(日本加除出版株式会社,2022)」では、法的責任を認めてしまっている謝罪文の例や、道義的責任を認めているにすぎない謝罪文の例を挙げていますので、参考にしてください。

念書等の提出を求められた場合の対応例①

冒頭の例を検討しましょう。

「事実関係について調査中であるにも関わらず、”誠実に対応します”という念書を提出してしまった。調査の結果、自社に責任はないと判明したが、念書を盾にして損害賠償請求を主張しており、話し合いが膠着してしまっている。」

この例では、「誠実に対応します」と回答したことが、企業の法的責任を認めるような文言であるため、調査の結果自社に責任はないと判明しても、損害賠償請求が続いてしまっています。

上述したように、まずは道義的謝罪を口頭で行うと良いでしょう。それで怒りが収まれば、このような事態は防げていたと考えられます。

念書等書面を差し入れる場合でも、事実関係については調査中であり、道義的謝罪のみを行う文言で対応すべきであったといえます。

後日調査結果を伝えることで、クレームの内容が不当であると主張することができたと考えられます。

念書等の提出を求められた場合の対応例②

「自社に明らかな落ち度があったので、やむを得ず念書を渡したところ、その念書をインターネットに断片的に切り取られて公開され、炎上してしまった。」

この例でも同様に、道義的謝罪によって解決できた場合には、そもそも念書を渡す必要はなかったといえます。

また、謝罪する内容を道義的責任にとどめておけば、不当な切り取り方をされても、クレーマーが主張する事実関係は異なると反論することが可能です。

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念書要求の対応を弁護士に相談・依頼するポイント

念書等を要求するクレーマーが現れた場合に、提出できない旨を伝えても繰り返し執拗に迫ってくる場合や念書等を提出する場合でも、どのような記載をすることが適切か判断がつかないことがあります。

繰り返し執拗に迫ってくる方法・内容次第では、脅迫罪・強要罪・恐喝罪などの犯罪となる場合もあり、捜査機関の協力を求める必要があります。

また、相手との交渉に従業員の労力が割かれるのが困る場合には、弁護士に依頼して代わりに対応を行ってもらうのが効率的です。

このような、個別の案件で解決に困っている場合には、弁護士に相談して対応を考えてもらう、または、弁護士に依頼して対応してもらうのが良いでしょう。

また、悪質クレーマー・カスハラについては、事前にマニュアル化して誰でも対応できるようにしておくことが望ましいです。

そのため、悪質クレーマー・カスハラ問題に精通している弁護士に相談・依頼して、体制を整えることも検討しましょう。

カスハラ対策

まとめ

まとめ

本記事のまとめは以下の通りです。

  • 念書を要求するカスハラ・クレーマーは要注意!
  • 念書等書面の提出は原則として断ること
  • 法的謝罪と道義的謝罪によって切り抜ける
  • 執拗なカスハラ・クレーマーは弁護士に相談・対応を依頼する

念書等の提出には、裁判で証拠にされるリスクやSNSを使って拡散されるリスクなどがあり、適切な対応が必要です。

対応が難しい場合には弁護士に依頼することもご検討ください。

香川総合法律事務所では、クレーマー顧客対応や訴訟になった場合のシームレスな訴訟対応を行なっています。また、当該企業の実態に添った具体的なマニュアル作成及び実演を交えたコーチング研修等を可能ですので、クレーム対応に不安がおありの場合は是非ご相談なさってみてください。

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