クレーマー・カスハラを行う顧客の中には、「責任者を出せ」「上司を出せ」と要求する人がいます。
このような要求をしてくる者に対してはどのように対策を立てれば良いのでしょうか。
この記事では、「責任者を出せ」「上司を出せ」と要求するクレーム・カスハラが行われた場合の対応方法についてお伝えします。
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目次
「責任者を出せ」「上司を出せ」というクレーム・カスハラ対応の注意点
「責任者を出せ」「上司を出せ」という場合のカスハラ顧客の対応をする場合の注意点を確認しましょう。
原則として決裁権者に繋がない
そもそも、誰が対応するかを決めるのは企業側であって、「責任者を出せ」「上司を出せ」という主張に応じる必要はありません。
そして、「責任者を出せ」「上司を出せ」というクレーム・カスハラを受けたとしても、原則として決裁権者が対応しないことが重要です。
理由は以下の2点です。
- 決裁権者の発言は不利な証拠になる危険性がある
- 決裁権者はその場での判断を求められる危険性がある
裁判においては、法的責任を認める謝罪を行ったかの考慮要素として、謝罪行為者の地位が考慮される可能性があります。
そのため、決裁権者が相手の要求を認めるような発言をして、それを録音された場合には、不利な証拠となり得ます。
判断が難しい要求をされた場合、決裁権者以外の従業員であれば、「上に確認します」等の回答によって、その場で回答することを回避することができます。
しかし、決裁権者は、顧客から「お前が責任者なんだから自分で判断できるだろう」と言われ、直ちに判断を求められる危険性があります。
決裁権者は直接顧客と対応しないとしても、従業員の相談体制を構築し、相談に適切に対応するなど、クレーム対応に主体的に取り組むことが重要です。
対応者を他の従業員に変えることも検討する
顧客の要求に応じて従業員を変更するべきではありませんが、企業自らの判断で対応者を他の従業員に変更することや複数人で対応することも検討しましょう。
従業員が明らかなミスをしたような場合、ミスをした従業員と顧客の2者間で交渉させると、ミスに付け込まれ、精神的に不利な交渉を強いられることが考えられます。
なお、対応者を変更する場合には、情報が引き継がれていないと、顧客のクレームが激化する可能性があるので、事実関係・対応の履歴は確実に引き継ぐようにしましょう。
道義的謝罪をクッションに使う
謝罪は顧客の感情を鎮めるのに有効です。
しかし、本来責任がない事項について謝罪をしてしまうと、その謝罪が原因で以後の交渉で執拗に謝罪したことに言及されたり、録音・録画された場合には証拠となってしまう可能性があります。
このような場合には、法的責任を認めない道義的謝罪を上手に利用しましょう。
道義的謝罪の詳しい解説については、こちらの記事をご参照ください。
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企業としてカスハラ対策をしておく必要がある
カスハラは、企業としてあらかじめ対策を講じておく必要があります。その理由としては、以下の2つが考えられます。
- 業務効率化のため
- 安全配慮義務を履行するため
それぞれ解説します。
業務効率化のため
「責任者を出せ」「上司を出せ」という主張を執拗に繰り返す場合に限らず、クレーム・カスハラが発生する度にどのように対応するかを決めることは、効率的ではありません。
カスハラがあった場合にどのような対応をするかを事前に決めておくことで、クレーム・カスハラ対策を効率よく行うことができます。
安全配慮義務を履行するため
クレーム・カスハラの対応をするのは、精神的に大きな負担を伴い、場合によっては暴力を振るわれることがあります。
適切な対応がなくこのような業務に従事させることで、心身に影響が及ぶようなことも生じえます。
会社は労働者に対して、生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるように、配慮する義務があります(安全配慮義務:労働契約法5条)。
適切な対応がなく心身に影響が及ぶことがあると、この安全配慮義務に違反したとして、従業員から損害賠償を受ける可能性があります。
そのため、カスハラ対策は、安全配慮義務を履行するためにも必要といえます。
企業のカスハラへの対応はマニュアル化して周知する
企業としては、カスハラ対策をマニュアル化して周知するのが望ましいです。
カスハラの対策は誰が対応する場合でも、明確な指針に基づいて行動できる必要があります。
そのため、マニュアル化の上、そのマニュアルに基づいてカスハラがあった場合に対応できるように周知を行います。
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「責任者を出せ」「上司を出せ」というクレーム・カスハラ対応マニュアルのポイント
それでは、どのようにしてカスハラ対応のマニュアルを作成すれば良いのでしょう。
ここでは、「責任者を出せ」「上司を出せ」というクレーム・カスハラ対応のマニュアル作成のポイントについて簡単に解説します。
カスハラ対応マニュアル作成のポイント
「責任者を出せ」「上司を出せ」というクレーム対応のマニュアルを作成する場合には次のポイントが重要です。
- 誰が対応にあたるか(例:クレームを受けた者が対応する)
- 誰が対応について助言・相談を与えるか(例:支店長にクレーム対応についての助言・相談を求める)
- 絶対にやってはいけないこと(例:調査が終わらない段階で責任を認める謝罪を行うことはNG)
- 誰に対して・どのようなタイミングで報告を行うか(例:クレームがあった場合、支店長および本社法務部に対して直ちに行う)
- どのような事情があれば対応者を変えるか(例:対応者本人がミスをしている場合には別の従業員が対応をする)
- 「責任者を出せ」「上司を出せ」と執拗に要求する場合の警察対応や法的手段など(例:一定時間以上事情聴取や呼びかけにも応じない場合に警察に通報をする)
- クレームに対する回答方法(例:会社名義で文書で回答をする)
- 対応事例についての社内での共有方法(例:社内チャットの「クレーム事例共有」で報告する)
もちろん会社によってどのようなクレームがあるかはそれぞれなので、自社の事情に合わせたマニュアルを作成するようにしましょう。
作成したマニュアルは共有し従業員に一度は目を通すように指導する
マニュアルを作成するだけでは意味がなく、従業員が作成したマニュアルに基づいた行動がとれるように、マニュアルは共有し、従業員に一度は目を通すように指導しましょう(例:新入社員研修・管理職研修など)。
カスハラ対策マニュアル作成には弁護士も活用しよう
カスハラ対策マニュアルを作成する場合には弁護士を活用することをお勧めします。
弁護士というと、実際に紛争になったときに相談・依頼するものというイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、カスハラ対策には、法律知識が不可欠です。
実際に多くの紛争に携わっている弁護士に相談・依頼して作成することで、より効果的なマニュアルが作成できるでしょう。
まとめ
本記事のまとめは以下の通りです。
- 「責任者を出せ」「上司を出せ」と言われても原則、決裁権者は対応しない
- 判断が難しい場合は、「上に確認します」と言い、その場で回答することは回避する
- 道義的謝罪をクッションに使う
- 企業のカスハラへの対応はマニュアル化して周知する
本来顧客と誰が対応するかは企業側の自ですが、このような主張することで自分の意見を無理にでも通そうとする顧客は一定数存在します。
本記事でご紹介したポイントを参考に、自社に応じた形にカスタマイズしてマニュアル化し、いつこのような主張があっても対応できるようにしましょう。
香川総合法律事務所では、当該企業の実態に添った具体的なマニュアル作成及び実演を交えたコーチング研修等を行っております。クレーマー顧客対応や訴訟になった場合のシームレスな訴訟対応も可能ですので、クレーム対応に不安がおありの場合は是非ご相談ください。
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