クレーマー・カスハラをする顧客の中には、解決のために金銭の要求をしてくる人がいます。
もちろん、自社に落ち度があり、落ち度に応じた金銭の支払い等をする必要がある場合もあります。
しかし、支払い義務がないにも関わらず金銭の支払いを求めてきたり、支払い義務がある場合でも過大な金額の支払いを求めてくるような場合には、どう対応すれば良いのでしょうか。
この記事では、金銭請求をしてくるクレーマー・カスハラへの対応方法についてお伝えします。
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目次
クレーマー・カスハラ顧客が金銭の請求をしてくるパターン
クレーマー・カスハラ顧客が金銭の請求をしてくるパターンには次のようなものがあります。
通常の金銭請求
例えば、飲食店で従業員が顧客の衣服に食べ物をこぼしてしまったような場合に、クリーニングにかかった実費を請求するような場合です。
かかった実費が領収書・レシートなどで確認できれば、特段問題視する必要はありません。
請求内容が不当
金銭請求で問題となるのが、請求内容が不当である場合です。
具体的には、金銭を請求する根拠がないにも関わらず請求をしてくるケースや、金銭を請求する根拠がある場合でも正当に請求できる範囲を超えて請求をしてくるケースです。
例えば、精神的苦痛を受けたとして法外な慰謝料を請求する場合が考えられます。
精神的苦痛に基づく慰謝料請求は、最終的には裁判で判断することになるのですが、その金額は当事者が考えているよりも安いケースが多いです。
請求方法が不当
金銭請求で問題となるもうひとつが、請求方法が不当である場合です。
金銭を請求する際に、脅迫をしてくる場合や、暴力に訴えてくるケースがあります。
中には、恐喝にならないよう「誠意を見せろ」などと曖昧な要求をして、暗に金銭の請求をしてくるようなケースもあります。
金銭請求をされた場合の対応方法
では、金銭請求のクレームを受けた場合には、会社としてはどのような対応をするべきなのでしょうか。
金銭請求についてはすべてが悪質なクレーム・カスハラではなく、中には正当な権利行使であって、誠実に応じるべきケースもあるので、適切な対応を検討する必要があります。
クレーム対応の一般的な対応方法
まず、クレームを受けた場合の一般的な対応方法として、次のステップによる対応を行いましょう。
- 聴取:クレームを受けた相手から事情や要求を聴取する
- 調査:クレーム内容に関する事実の調査を行う
- 判定:事実関係にもとづいてクレーム内容が正当か不当かの判定を行う
- 回答:判定した内容を相手に伝える
詳しくはこちらの記事で解説していますので、合わせてご覧ください。
クレームについて聴取する
まず、受けたクレームについて顧客から事情や要求内容を聴取します。
聴取する事項はいわゆる5W1Hにもとづいて聴取を進めると、スムーズです。
- いつ(When)
- どこで(Where)
- だれが(Who)
- 何を(What)
- なぜ(Why)
- どのようにして(How)
例えば、製品の欠陥によって怪我をしたので治療費と慰謝料を払ってほしいという請求の事例に当てはめると、
- いつ購入したのか
- どこで購入したのか
- 誰が購入したのか
- 何を購入したのか
- なぜ怪我をしたのか
- どのようにして怪我をしたのか
といった事情を聴取します。
また、要求してきた金額については、金額の根拠も聴取するようにしましょう。
クレームについて調査をする
聴取した内容をもとに、調査を行います。
顧客の主張する内容について、証拠となるものがある場合にはこれを送ってもらいましょう。
例えば、
- 購入した商品のレシート・領収書
- 壊れたときの写真・動画
- 怪我の診断書
などが挙げられます。
金銭請求については、主張している金額について正当かどうかも調査を行います。
例えば、治療費として請求している場合には、領収書の金額や診断書から適切な額の請求なのか、慰謝料として請求している場合には類似の事例でどれくらいの金額の慰謝料が認定されているかなどを調査しましょう。
調査した事実関係をもとに判定を行う
調査した事実関係をもとに判定を行います。
金銭請求をされた場合には、
- 損害賠償として適切な額のベースライン
- 金額の上げ幅
以上の2つを意識します。
適切な額のベースラインは、顧客の主張や提出された証拠によって判断します。
請求している額が、適切な損害額のベースラインの中にある場合には、金銭請求のクレームを受け入れるべきであるといえます。
また、ベースラインを超えている場合でも、それ以上交渉をするのに労力がかかるような場合や、訴訟を起こされたときに訴訟に対応する手続き費用・弁護士費用、悪評を流されるリスク等を考慮して許容すべき上げ幅がある場合もあります。
そのため、顧客が請求してくる額が上げ幅の額の中にある場合には許容することも検討しましょう。
反対に、この上げ幅を超えた額を超える請求をしてきた場合には、断固拒否しなければなりません。
一度支払ってしまうと、「この会社はなにかあると多額の金銭を払ってもらえる会社だ」とカモにされてしまう可能性があるためです。
判定した内容を回答する
判定した内容を回答しましょう。
言った・言わないの問題が生じないように、回答は文書で行うのが望ましいでしょう。
金銭の支払いをする場合には合意書等を作成する
判定の上、金銭の支払いをする場合には、合意書(和解書・示談書)を作成しましょう。
何の件についての支払いなのか、支払い金額はいくらか、第三者に口外しないこと、清算条項などを記載した合意書を作成します。
清算条項とは、合意書に定めるほかお互いに何らの債権債務を持たないことを確認する旨の条項です。
一度金銭請求が認められると、要求を繰り返すクレーマーもいるため、それを防ぐために合意書には清算条項を盛り込むことが有効です。
なお、書面の名称については、合意書、和解書、示談書等のいずれでも効力は変わらないと考えられます。
「カスハラ対策実務マニュアル(日本加除出版株式会社,2022)」では、飲食店を経営する企業が解決金を支払うケースの合意書の例を挙げていますので、参考にしてください。
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金銭請求をされた場合などクレーム・カスハラに備えてマニュアルを作成しておく
以上のような金銭請求をされた場合を含めて、クレーム・カスハラがあった場合に備えてマニュアルを作成しておくようにしましょう。
その理由は以下の2点からです。
クレーム・カスハラへの対応をスムーズに行うため
クレーム・カスハラに備えてマニュアルを作成すべき理由の一つが、クレーム・カスハラがあった場合の対応をスムーズにするためです。
金銭請求を受けた場合に限らず、クレーム・カスハラがあった場合に、何も対応をしていない場合、クレームを受けた担当者や、その上司・責任者がどう対応するかを決める必要があり、スムーズな対応ができません。
マニュアルで対応方法や相談する相手を決めておけば、クレーム・カスハラにスムーズに対応することができます。
従業員への安全配慮義務の履行になる
会社は労働者と労働契約を結んでおり、労働契約法5条で従業員の生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるように必要な配慮をする義務があるとされています(安全配慮義務)。
クレーム・カスハラ顧客の対応は精神的負担も大きく、中にはこれらの対応がうまくいかず精神疾患となる場合もあります。
また、場合によっては、顧客から暴力を受け怪我をする場合もあります。
何らの対策もしなかった場合には、安全配慮義務違反を問われ、従業員から損害賠償請求を受ける可能性もあるので、適切な対応が不可欠です。
マニュアルを作成することで従業員の負担を軽減すれば、安全配慮義務の履行にも繋がります。
まとめ
本記事のまとめは以下の通りです。
- 金銭の請求内容・請求方法が不当かどうかで見極める
- 「聴取」「調査」「判定」「回答」の4つのステップで適切に対応する
- 金銭の支払いをする場合には合意書等を作成する
- 金銭請求をされた場合などクレーム・カスハラに備えてマニュアルを作成しておく
金銭請求をしてくる場合には、正当に支払うべき場合もあるので、すべてのケースを不当なクレーム・カスハラと断じるわけにはいきません。
ご紹介したクレーム対策のフレームワークに沿って、請求が妥当かどうか、金額が妥当かどうかを検討しましょう。
香川総合法律事務所では、当該企業の実態に添った具体的なマニュアル作成及び実演を交えたコーチング研修等を行っております。クレーマー顧客対応や訴訟になった場合のシームレスな訴訟対応も可能ですので、クレーム対応に不安がおありの場合は是非ご相談ください。
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