昨年3月、愛媛県伊方町で役場の対応に不満を持った男性が役場職員を自宅に呼びつけ、翌日未明まで約8時間暴言を浴びせる事案が発生した。職員らによる録音データには「おのれの後ろを3歩下がって歩いてやろうかい」「木刀持って、後ろからぶち破っても良い位」「俺がお前の家に行く。お前がいなかったら嫁がいるやろうし、待たせてもらう」等の暴言が記録されている。警察は今年5月、男性を脅迫や強要等の容疑で書類送検した。
男性は昨年1月頃から、役場職員の対応について激しい苦情を繰り返していたという。呼びつけられた職員の一人は抑うつ状態と診断され、8月に役場を退職。男性と顔を合わせない為に伊方町を離れた。人口約8000人と小規模自治体であり、高齢化の進む伊方町において、「退職者が出るのは非常な痛手」と濱松一良副町長(当時)は話す。
この件を受け、伊方町は昨年6月、「不当要求行為等対策条例」を制定。条例では不当要求行為が「明らかに違法と認められる場合又は職員その他の者に危険が及ぶおそれがあると認められる場合には、上司の指示又は職員自らの判断により、警察への通報その他の必要な措置を講ずる」こと等が定められている。また、名札の表記を苗字のみに変更、役場内に監視カメラを設置する等の対策も導入した。
少子高齢化により人材確保が課題となる中、カスタマーハラスメント対策が極めて重要であることを示した事例といえる。