「土下座しろ!」という怒号、深夜まで鳴り止まない電話、SNSでの執拗な誹謗中傷……。カスハラが横行する今、常軌を逸したクレーマーの対応に追われ、心身ともに限界を迎えている人も少なくはありません。
「警察に相談しても『民事不介入』と言われて相手にされない」
「下手に刺激して、逆恨みされるのが怖い」
多くの企業担当者がこのように考え、理不尽な要求に耐え続けています。しかし、はっきり申し上げます。その認識は誤りです。今すぐ捨ててください。
悪質なカスタマーハラスメント(カスハラ)は、もはや単なる「お客様トラブル」ではありません。刑法に触れる立派な犯罪であり、カスハラで逮捕されるケースは現実に多発しています。
この記事では、企業法務の専門的な視点から、「現場の発言がどの罪になるか」という判断基準と、警察を確実に動かすための「証拠の集め方・被害届の出し方」を網羅的に解説します。
もう、泣き寝入りは終わりです。この記事を読み、無法者を許さないための強力な「法的武器」を手に入れてください。従業員と自社を守るための具体的な反撃の仕方を学びましょう。
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目次
悪質なカスハラは逮捕できる!警察の対応は激変している

まず結論からお伝えします。悪質なクレーマー(カスハラ加害者)を警察に逮捕してもらうことは十分に可能です。
「お客様は神様」という言葉を盾にすれば何をしても許される時代は、とうの昔に終わりました。 現在、社会全体が「カスハラ=犯罪」という認識へと大きくシフトしており、警察の対応も以前とは劇的に変化しています。実際にカスハラ逮捕者のニュースを目にする機会も増えてきました。
ここでは、なぜ今カスハラ逮捕が可能になったのか、その背景と、逮捕された後に加害者を待ち受ける現実について解説します。
「お客様トラブル」から「犯罪」へ!厳罰化が進む背景
かつて警察は、店舗と顧客のトラブルに対して「民事不介入」という原則を盾に、消極的な姿勢を見せることがありました。
しかし、コンビニ、タクシー、バス、病院、市役所(公務員)など、あらゆる現場からの悲鳴に近い要望を受け、状況は一変しました。
- 警察庁の方針転換: 悪質なクレームに対しては、刑法を適用し、厳正に対処するよう現場に指示が出ています。福岡県警カスハラ逮捕事例のように、県警レベルで対策強化を打ち出す動きもあります。
- 条例の制定: 東京都の「カスタマーハラスメント防止条例」をはじめ、盛岡市や生駒市など、自治体レベルでもカスハラ防止条例の整備が加速しています。
つまり、今の警察は「証拠さえ揃っていれば、積極的に動く」というスタンスに変わっています。 企業側が「これは営業妨害だ」「脅迫だ」と毅然と訴えれば、警察は彼らを「お客様」ではなく「被疑者(犯罪の疑いがある人)」として扱います。
カスハラで逮捕されるとどうなる?加害者が受ける「社会的制裁」の全貌
カスハラ逮捕事例が増える中、未だに「逮捕なんてされるわけがない」「警察を呼ぶなら呼べ」と高を括っている者が多くいます。しかし、実際に逮捕されれば、彼らの人生は崩壊します。カスハラ逮捕のその後どうなるのか、その末路を見てみましょう。
- 最大23日間の身柄拘束(勾留)
- 逮捕されると、警察署の留置場に拘束されます。
- 検察官が「勾留」を請求し認められれば、起訴されるまで最大23日間、社会から隔離されます。当然、会社には行けません。
- 実名報道と社会的信用の失墜
- 「コンビニ店員に土下座を強要した疑いで、会社員の男(〇〇)を逮捕」といったニュースが実名で流れるリスクがあります。
- ネット上に名前が残り続けるため、再就職や結婚など、将来にわたって影響を及ぼします。
- 懲戒解雇のリスク
- 長期間の無断欠勤や、犯罪行為による逮捕を理由に、勤務先から懲戒解雇される可能性が極めて高いです。
- 前科がつく
- 起訴され、有罪判決(略式起訴による罰金刑も含む)が出れば、「前科」がつきます。
このように、逮捕は加害者にとって「社会的な死」に近いダメージを与えます。 「たかがクレーム」ではありません。彼らがやっていることは、これだけのペナルティを受けるに値する行為なのです。
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この言葉・行動が出たらアウト!カスハラ逮捕につながる「主要7大犯罪」

「逮捕されると人生が終わる」というリスクを背負ってまで、クレーマーはなぜ暴走するのでしょうか。それは、「自分の行為が犯罪になると自覚していないから」です。
しかし、無知は罪を免れる理由にはなりません。 現場で発せられる「よくある脅し文句」や「言動」が、刑法のどの条文に該当するのか。ここでは、カスハラで適用されやすい主要な犯罪を、NGワードと共に解説します。
これらを知っておくことは、現場での「録音チャンス(証拠確保のタイミング)」を見逃さないためにも極めて重要です。
| 罪名 | NGワード・行動例 | 法定刑(最大) |
|---|---|---|
| 1. 強要罪 | 「土下座しろ」「念書を書け」 | 懲役3年 |
| 2. 恐喝罪 | 「誠意(金)を見せろ」「タダにしろ」 | 懲役10年 |
| 3. 威力業務妨害罪 | 「店を潰すぞ」、大声で騒ぐ、机を蹴る | 懲役3年 / 罰金50万 |
| 4. 偽計業務妨害罪 | 無言電話の連打、嘘の注文 | 懲役3年 / 罰金50万 |
| 5. 不退去罪 | 「帰れ」と言われても居座る | 懲役3年 / 罰金10万 |
| 6. 侮辱・名誉毀損罪 | 「バカ」「無能」、SNS晒し | 懲役3年 / 罰金50万 |
| 7. 暴行・傷害罪 | 殴る、胸ぐらを掴む、水をかける | 懲役15年 / 罰金50万 |
1. 強要罪(刑法223条):「土下座しろ」
- NGワード: 「土下座しろ」「念書を書け」「自宅まで謝りに来い」
- 要点: 暴力や脅迫を用いて、相手に「義務のないこと」を行わせる行為です。「客なのだから謝罪させるのは当然だ」という理屈は通りません。土下座の強要は、強要罪の典型例であり、罰金刑がない重罪です。
2. 恐喝罪(刑法249条):「誠意(金)を見せろ」
- NGワード: 「誠意を見せろ」「精神的苦痛の慰謝料をよこせ」「治療費として100万払え」
- 要点: 相手を畏怖(怖がらせる)させて、金品や財産上の利益を要求する行為です。直接「金を払え」と言わなくても、正当な賠償範囲を大幅に超える不当な要求は、恐喝とみなされます。
3. 威力業務妨害罪(刑法234条):「店を潰してやる」
- NGワード/行動: 「店を潰してやる」「明日から街宣車を回すぞ」、大声で騒ぐ
- 要点: 「威力(人の意思を制圧するような勢力)」を用いて、他人の業務を妨害する行為です。大声で怒鳴り散らして他の客を帰らせる行為などが該当します。
4. 偽計業務妨害罪(刑法233条):陰湿な嫌がらせ
- NGワード/行動: 無言電話を繰り返す、大量の虚偽注文をする
- 要点: 「偽計(人を欺く、あるいは不知を利用する)」を用いて業務を妨害する行為です。カスハラによる電話の逮捕事例で多く適用されます。「店に行かなければ捕まらない」は間違いです。
5. 不退去罪(刑法130条):「社長が出るまで帰らない」
- NGワード/行動: 「納得するまで動かない」「責任者を出せ」と居座る
- 要点: 店舗の管理者(店長など)が「お引き取りください(退去要請)」と言ったにも関わらず、正当な理由なく居座り続ける行為です。「お帰りください」と明確に告げた時間を記録しておくことが、逮捕への決定的な証拠になります。
6. 侮辱罪・名誉毀損罪(刑法230条・231条):「バカ」「無能」
- NGワード: 「バカ」「ブス」「役立たず」、SNSでの実名晒し
- 要点: 公然と、人を侮辱したり、社会的評価を低下させたりする行為です。「事実なら書いてもいい」は間違いで、事実であっても名誉毀損は成立します。
7. 暴行罪・傷害罪(刑法208条・204条):手を出したら即アウト
- 行動: 殴る、蹴る、胸ぐらを掴む、水をかける、椅子を蹴る
- 要点: 怪我をしなくても、「不法な有形力の行使」があれば暴行罪になります。タクシーの防護板を叩く、運転手に物を投げつけるといった行為でも逮捕されます。
【判例・事例】実際に逮捕・書類送検されたカスハラ事件簿

「法律上は犯罪でも、実際には逮捕されないんでしょ?」 そう思っているなら、今すぐその認識をアップデートしてください。近年、警察は「悪質なクレーマー」に対して非常に厳しい姿勢で臨んでおり、カスハラ逮捕例は後を絶ちません。
【事例1】「土下座強要」で逮捕されたボウリング場の客(強要罪)
滋賀県のボウリング場で、店員の態度に腹を立てた客が、店員に土下座を強要。さらにその様子をスマートフォンで撮影し、SNSに投稿した事件です。 加害者は後日、強要容疑で逮捕されました。
【ポイント】
「謝罪の一環としてやらせた」という言い訳は一切通用しません。特に「土下座」は強要罪の構成要件を満たしやすく、さらにSNSで拡散するという悪質性が、逮捕の決定打となりました。
【事例2】コンビニ店員への暴言・業務妨害(威力業務妨害罪)
大阪府のコンビニエンスストアで、店員の態度が気に入らないと激昂し、約2時間にわたって大声で怒鳴り続け、他の客の買い物を妨害した事件。 この男性は威力業務妨害容疑で逮捕されました。
【ポイント】
重要なのは、「暴力を振るっていなくても逮捕された」**という点です。「大声で長時間居座る」という行為自体が、店の業務を妨害する「威力」とみなされたのです。
【事例3】4,000回以上の電話で逮捕された高齢男性(偽計業務妨害罪)
東京都の企業に対し、執拗にクレーム電話を繰り返すカスハラ電話逮捕の事例です。約1年間にわたり合計4,000回以上もの電話をかけ続けた70代の男性が逮捕されました。
【ポイント】
店舗に来店せず、電話という非対面の手段であっても、その回数や頻度が常軌を逸していれば**「偽計業務妨害罪」**等が成立します。
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警察がカスハラ逮捕に踏み切るリアルな境界線(レッドライン)

では、どのようなクレームなら警察は実際に「逮捕(または捜査)」に動くのでしょうか? ここが最も現場が知りたい「レッドライン」です。
単なるマナー違反と、刑事事件になるケースの分かれ目を理解しておきましょう。
単なる「マナー違反」と「犯罪」の分かれ目
- マナー違反:
- 言葉遣いが荒い(敬語がないレベル)
- 商品に対する不満を執拗に言う(正当な範囲内)
- 声が大きい(業務を妨害するほどではない)
- 犯罪(逮捕リスクあり):
- 業務を止めた: 他の客が帰ってしまう、レジが止まる、電話回線が塞がる。
- 恐怖を感じさせた: 「殺すぞ」「夜道に気をつけろ」などの脅迫。
- 退去要請を無視した: 「帰ってください」という指示に従わず居座り続けた。
現行犯逮捕と後日逮捕(通常逮捕)の違い
逮捕には大きく分けて2つのパターンがあります。
- カスハラ現行犯逮捕
- 目の前で暴れている、物を壊している、職員を殴っている場合。
- 即座に110番通報すれば、駆けつけた警察官がその場で逮捕します。これが最も確実です。
- 通常逮捕(後日逮捕)
- 現場では逃げられた、あるいはその場では警察を呼ばなかった場合。
- 後日、防犯カメラや録音データを警察に提出し、逮捕状を請求してもらいます。多くのカスハラ事件はこちらになりますが、「証拠」がなければ逮捕状が出ません。
警察が動く3つの条件:悪質性・継続性・証拠
警察に「事件」として扱ってもらうためには、以下の3要素を揃える必要があります。
- 悪質性: 迷惑行為の内容が常軌を逸しているか(土下座強要、長時間拘束など)。
- 継続性: 企業側が「やめてください」と注意・警告したにも関わらず、繰り返しているか。
※ここが重要です。「警告を無視した」という事実が、悪質性の証明になります。 - 証拠: 「言った言わない」にならない、客観的な証拠(映像・音声)があるか。
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警察を確実に動かすための完全証拠セットと相談手順

警察に動いてもらうためには、ただ「困っています」と相談するだけでは不十分です。 警察官に「これは事件だ」と認識させるための「証拠」と「伝え方」が必要です。
「言った言わない」を防ぐ!録音・録画は必須
刑事事件において最も重要なのは客観的な証拠です。 加害者は警察の前では「大声なんて出していない」「ただお願いしただけだ」と平気で嘘をつきます。これを覆すには、記録しかありません。
- 秘密録音は違法ではない: 自分の身を守るために、相手の同意なく会話を録音することは、法的に問題ありません(証拠能力も認められます)。
- 証拠セット:
- 防犯カメラ映像: 相手の表情、威嚇的な動作、居座っている時間。
- 音声データ: 暴言、脅迫の内容、大声のレベル。
- 対応記録: いつ、誰が、何を言われ、どう対応したかの時系列メモ。
- 実害の証拠: 壊された物品の写真、怪我の診断書(精神的苦痛によるPTSDの診断書も有効)。
警察窓口での伝え方|「相談」ではなく「被害申告」へ
警察署に行くと、まずは生活安全課などの相談窓口に通されますが、ここで「今後の対応の相談」をしてはいけません。相談レベルだと「パトロールを強化しますね」で終わってしまう可能性があります。
【警察を動かすキーワード】
- 「相談ではなく、被害届を出したいです」
- 「被疑者を処罰してほしいという強い意思があります」
- 「業務に支障が出ており、従業員に危険が及んでいます」
このように、「犯罪被害に遭っている」「処罰を望む」という意思を明確に伝えてください。
被害届と告訴状の違い!どちらを出すべきか
警察に提出する書類には2種類あります。
- 被害届: 「犯罪の被害に遭いました」と申告する書類。
- 捜査のきっかけにはなりますが、警察に捜査義務は生じません。
- 告訴状: 「犯人を処罰してください」と強く求める書類。
- 受理されると、警察には捜査義務が生じ、検察へ書類を送る義務も発生します。
本気で相手を逮捕・起訴させたいなら、「告訴状」の提出を目指すべきです。ただし、告訴状は記載内容が厳格で受理のハードルが高いため、弁護士に作成を依頼するのが一般的かつ確実です。
カスハラ逮捕はゴールではない。二度と被害に遭わないための企業防衛

警察が動いてカスハラ逮捕者が出たとしても、それは一時的な解決に過ぎません。 「釈放された後に報復に来るのではないか?」という不安を解消し、二度と被害に遭わないための対策が必要です。
加害者に対する「接近禁止命令」や「出禁通知」
刑事手続きと並行して、民事上の措置も講じましょう。
- 出入り禁止通知: 内容証明郵便で「今後一切の来店・連絡を拒否する」旨を通知します。
- 法的効果: これを送った後に来店すれば、その時点で**「建造物侵入罪」や「不退去罪」**が成立するため、即座に110番通報して現行犯逮捕してもらうことが容易になります。
従業員の心のケアと安全配慮義務
過酷なカスハラを受けた労働者は、心に深い傷を負っています。 「逮捕して終わり」ではなく、産業医との面談を手配したり、配置転換を検討したりするなど、企業としてメンタルケアを徹底してください。
「会社が最後まで戦ってくれた」という事実は、被害を受けた職員だけでなく、他のスタッフにとっても大きな安心感となり、組織の結束を強めます。
弁護士を入れることで警察が動きやすくなる理由
警察は「民事不介入」の原則があるため、少しでも「料金トラブル(民事)」の匂いがすると介入を躊躇します。
弁護士を入れる最大のメリットは、「民事トラブルと刑事事件を切り分けられること」です。 企業法務に強い弁護士や法律事務所が「料金の件は別途対応しているが、この暴力と脅迫は純粋な犯罪行為である」と法的に整理して説明することで、警察は安心して捜査に着手できるようになります。
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カスハラ逮捕のまとめ|泣き寝入りは終わり。毅然とした法的措置が現場を救う

ここまで、悪質クレーマーを逮捕するための条件と手順を解説してきました。
最後に、この記事で最もお伝えしたいことを要約します。
- カスハラは犯罪: 「強要」「恐喝」「威力業務妨害」など、刑法に触れる行為は逮捕できる。
- 証拠が命: 感情論ではなく、録音・録画・記録という「客観的証拠」が警察を動かす。
- 覚悟を持つ: 「相談」ではなく「処罰」を求める。被害届や告訴状を出すことで、自社の本気度を示す。
「穏便に済ませたい」という気持ちは分かりますが、一線を越えた悪意に対しては、毅然とした法的措置(逮捕)こそが、従業員を守るための最大の「優しさ」であり「義務」です。
【あなたの会社を守るための次のアクション】
- 証拠の整理: 手元にある録音や映像を時系列に整理し、「どの発言がどの罪になるか」を判断する。
- 弁護士への相談: 証拠が十分か、告訴状の作成が可能か、専門家の判断を仰ぐ(多くの事務所で無料相談が可能です)。
- 警察への同行: 弁護士と共に警察署へ行き、被害届または告訴状を提出する。
理不尽な暴力に屈することなく、正義と従業員を守り抜いてください。
香川総合法律事務所では、カスハラ顧客やクレーム顧客の対応をはじめ、企業向けのカスハラマニュアルの作成や、研修等も行なっております。カスハラやクレームにお困りの場合は、是非ご相談ください。
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